雪野さん さっきのは忘れてください、俺、やっぱりあなたのこと嫌いです。最初から、あなたは何だか、イやな人でした、朝っばらからビールを飲んで、わけの分からない短歌(たんか)なんかふっかけてきて、自分のことは何も話さないくせに、人の話ばっか聞きだして、俺のこと生徒だって知ってたんですよね。汚いですよそんなのって、あなたが教師だって知ってたら、俺は靴のことなんて喋らなかった。どうせできっこない、叶いっこないって思われるから、どうしてあんたはそう言わなかったんですか。子供の言うことだって適当(てきとう)に付き合えばいいって思ってた、俺が何かに、誰かに憧れ(あこがれ)たって、そんなの届きっこない、叶うわけないって、あんたは最初から分かってたんだ、だったらちゃんと言ってくれよ。邪魔だって、がきは学校に行けって、俺のこと嫌いだって、あんたは、あんたは一生ずっとそうやって、大事なことは絶対に言わないで、自分は関係ないって顔して、ずっと一人で、生きていくんだ。
毎朝、毎朝ちゃんとスーツを着て、学校に行こうとしてたの、でも怖くって、どうしても行けなくて、あの場所で、私、あなたに、救われてたの。